日本語の文字の基本となる「ひらがな」を読むためにはいくつかのスキルが必要です。
そして、そのスキルとは具体的に以下の6つです。
読む力が身につくと、正確かつスピーディに文字を読めるようになり、読解力の向上につながります。
この記事では、言語聴覚士「くろねこ」が、読むために必要な6つのスキルと、そのスキルを育むために実践できる方法を紹介します。
今回紹介する方法は、幼児期でも日常的に取り入れやすい内容を選びました。
お子さんの「ひらがなを読む力」を育み、読解力向上にお役立てください。
はじめに
この記事を読まれている方は、今まさに「文字を読む」という行動をしています。
文字を読み、内容を理解することで新しい知識を得ることができます。
大人が当然のように行っている「文字を読む」という行動を、子どもたちはどのように身につけるのでしょうか。
幼児期後半から小学校低学年で「文字を読む力」は大きく発達します。
そして、この「文字を読む力」は、いくつかのスキルが必要と言われています。
読む力が育つと読解力が育つ
読む力が育つと、スピードと正確性が向上します。
結果、読解力が育ちます。
読解力は小学校でつまずきやすい、国語・算数の文章題で必要な力。
そのため、幼児期にこの記事で紹介する6つのスキルを育むことで、お子さんの読解力につながるでしょう。
幼児教材で取り入れられている
6つのスキルを育む学習は、幼児教材でも積極的に取り入れられています。
- カラフルな配色
- 間違い探し
- 迷路
などがそうです。
「これ、何のための教材?」というものも、この6つのスキルがわかると納得できるものも多いです。
次にこの6つのスキルについて解説しますよ。
スキル①「音韻意識」
音韻意識とは?
ざっくり大切な点だけ説明すると
音韻意識とは、発音された言葉を聞いたときに、その言葉がいくつの音でできているかわかったり、音の違いがわかったりする力のことをいいます。
音韻意識がひらがなを読む上で重要な理由とは?
例えば、「あおい」という言葉は、
「あ-お-い」と3つの音からできている
「あ」「お」「い」はそれぞれ違う音
と、大人ならわかります。
大人は音韻意識が育っているからわかるのです。
そして、このスキルが「ひらがなを読む」時にはたいへん重要。
なぜなら、日本語は「1つの音」と「1つの文字」が対応しているため、「1つの音」を正確に認識することで、ひらがなを正確に読むことができるようになるからです。
音韻意識を育む方法は?
音韻意識を育む方法としては、以下のようなものがあります。
言葉に合わせて手拍子
言葉を言いながら1文字ずつ手をたたく遊びです。
例:くるま:「く・る・ま」と言いながら3回手拍子。
文字数が多いもの、言い慣れていないことば(カピバラ等)は難易度高め。
小さい文字「ゃ、ゅ、ょ、っ」、伸ばす音も「1つ」としてカウントしましょう。
例:チョコレート→「チ-ヨ-コ-レ-イ-ト」の6回。
言葉の音の数がわかる力を育むよ
じゃんけんゲーム
ゴールを決めて、じゃんけんで勝ったら下記の歩数進みます。
先にゴールした人が勝ち。
階段でやってもいいですね。
グーで勝った場合:「グ-リ-コ」で3歩すすむ。
チョキで勝った場合:「チ-ヨ-コ-レ-イ-ト」で6歩すすむ。
パーで勝った場合:「パ-イ-ナ-ツ-プ-ル」で6歩すすむ。
これも言葉の数がわかる力を育むね。
しりとり
言葉の「はじめの音」と「最後の音」を意識する力を育む遊び。
ルールも簡単なのでおすすめです。
言葉がどんな音でできているかわかる力を育むよ!
言葉あつめ
はじめに集める音を決めます。
決めた音からはじまる言葉を交代で言って、たくさん言えた人が勝ちの遊びです。
例:「さ」のことば集め→さくら・さかな・さる・さめ…
言葉の「はじめの音」を意識する力が育まれる!
以上のように、簡単な取り組みでも音韻意識力を育むことができます。日常生活の中で、楽しみながら取り入れてみるとよいでしょう。
スキル②「ワーキングメモリ」
ワーキングメモリとは?
ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶し、それを処理する脳の機能の一つです。
同時に2つのことを行う場面では、ワーキングメモリの機能を使う必要があります。
ワーキングメモリがひらがなを読む際の役割とは?
文字を読むときに、重要な役割を果たすのがワーキングメモリ。
ひらがなは字形が単純で似たような形が多く、細かい違いを見分ける必要があります。
この時に、ワーキングメモリが情報を保持し、処理することで正確にひらがなを認識することができます。
また、読解では「文字を読む」と「内容を理解する」の2つを同時に行う必要があるため、ワーキングメモリは読解力にも影響しますよ。
ワーキングメモリを育む方法
さかさまことば
「さ-か-な」をさかさまから読むと?
というような問題を出して答える遊びです。
文字数が増えると難易度が上がります。
慣れてきたら、お子さんに問題を出してもらい、ご両親の言った言葉が合っているか判断してもらうのもいいですね。
音韻意識も鍛えられる遊びだよ!
スキル③「視覚認知」
視覚認知とは何か?
視覚認知とは、目で見た情報を認識し、判断・処理する力のことです。
具体的には、形や色、大きさ、方向などの情報を正確に把握し、それらを見分けられる能力です。
視力とは別の力だよ。
視覚認知がひらがなを読む際の役割とは?
ひらがなを読む際には、文字の形や線の長さ、曲がり方などを正確に認識し、それらを脳内で組み合わせて見分ける必要があります。
また、視覚認知力が高ければ高いほど、文字や文章を迅速かつ正確に理解することができます。
視覚認知力を育む方法
パズル
パズルは解く過程で、ピースの位置関係や形状を把握する必要があります。
これによって、「視覚認知力」が向上し、位置や方向を正確に認識する能力が養われます。
公文のパズルがおすすめ
間違い探し
間違い探しは、似たイラストの細かな違いを注意深く見ることが必要な遊びです。
細かな箇所に注意を向けることが視覚認知力を育みます。
また、短時間でできる遊びのため、手軽に行えることもいいですね。
間違い探しは子どもも大好き!
スキル④「語彙」
語彙とは何か?
語彙とは、「言葉の数」のことです。
語彙は「知っている言葉の数」と「話す言葉の数」の2つに分けられます。
文字を読むとき、より大切なのは「知っている言葉の数」。
文字を読みながら、単語や文章の意味を理解するために語彙力が必要となります。
「知っている言葉の数」は読解力に影響するよ!
語彙がひらがなを読む際の役割とは?
ひらがなは基本的には音の組み合わせで構成された文字であり、1つ1つの文字が意味を持つわけではありません。
そのため、内容を理解するためには、その「言葉」の意味を知っていることが必要です。
語彙力が高いと、早く正確に文字を読むことができます。
語彙力を育む方法
以下は、幼児期のお子さんの語彙力を育むために有効な方法です。
読み聞かせ
お子さんに絵本を読み聞かせることで、新しい単語を覚える機会を増やすことができます。
絵本には普段使わない言葉やフレーズが多く含まれているため、語彙力を育む上で最も効果的な方法です。
大人が普段使う言葉の種類は意外と少ないよ。
会話
子供たちに積極的に話しかけ、コミュニケーションを図ることで、日常会話で使われる単語を覚えることができます。
ご両親がよく話すフレーズは子どももマネして覚えます。
歌・リズム遊び
単語を覚えやすいリズムやメロディーにのせて歌ったり、リズム遊びを行ったりすることで、楽しく単語を覚えることができます。
楽しい体験
単語を覚えるための体験を楽しませることで、単語の記憶が強くなることがあります。
例えば、野外での自然体験や、動物園の見学などが挙げられます。
スーパーも言葉の宝庫だね!
スキル⑤「自動化」
自動化とは何か?
自動化とは、文字を見てから声に出すまでの時間が速くなることをいいます。
自動化がひらがなを読む際の役割とは?
自動化のスキルは、文字を読む速度や正確性に関係しています。
幼児期は1文字1文字読む「逐次(ちくじ)読み」ですが、大人は文章をパッと見て、スラスラと読めます。
大人がスラスラ読めるのは、「読む」ことを繰り返したことで、文字と音の対応が自動的にできるようになったため。
自動化のスキルが高まると、素早く理解しながら読むことができるようになります。
自動化を育む方法
自動化のスキルは、読むことを繰り返すことで身についていくものなので、「ひらがなを読む」が育む方法になります。
お子さんが好きな絵本を多く用意してあげましょう。
図書館で借りよう!
自動化のためには、繰り返し読んで内容を知っている絵本も用いるのが効果的です。
スキル⑥「眼球運動」
眼球運動とは何か?
眼球運動とは、目の周囲の筋肉を使って視線を移動させることです。
眼球運動がひらがなを読む際の役割とは?
ひらがなを読む際には、1文字1文字を正確に認識する必要があります。そのためには、視線を素早くかつ正確に文字の先頭から末尾まで移動させることが求められます。
また、文章を読むときに1行飛ばししないように読むためにも必要なスキルです。
眼球運動を育む方法
ボール転がし
2人ペアになってボールを転がしてキャッチをする遊びです。
転がるボールの追視が眼球運動を育むトレーニングになります。
少しバウンドさせたり、スピードupしたりすることで難易度を調整できます。
ピンポン玉は難易度が高い!
風船バレー
風船はゆっくり動くので幼児期における眼球運動を育む遊びとしておすすめです。
数を数えながら、交代でトスをしましょう。
風船の大きさで難易度を調整します。
大きい風船はゆっくり動きますが、「見続ける」必要があるのでよい練習になります。
カルタ
目的のイラスト&ひらがなを探すために視線をたくさん動かす必要があります。
ルールが簡単わかりやすく、子どもが大好きな遊びです。
間違い探し
間違い探しは、ボール転がしよりも視線を動かす距離が短いのが特徴です。
文章を読むときに近い眼球運動というメリットがあります。
まとめ
文字を読むために必要なスキルを6つ紹介しました。
ひらがなを読めるようになることは、文字を理解する上での基礎力となります。
就学以降の読解力向上にもつながるスキルです。
ぜひ、子どもたちが楽しく学びながら、豊かな文字の世界を広げていってください。
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