2才に向けての子どもの力を伸ばしたい。家でどんなことができる?
この記事では、「おおむね1才半~2才」のお子さんの「育ち」と、家庭でできる関わり方を発達の専門家:言語聴覚士が解説します。
- 国家資格:言語聴覚士(ST)免許保有
- 総合病院で働く小児ST
- お子さんの発達を支援する仕事をしている
1才半ごろの「育ち」の概要
歩き始め、手を使うことによって、身の回りのモノに自発的に働きかけていく姿を目にする時期ですね。
また、言葉を話すようになり、身近な人との関わりが強まります。
その結果、自分の意思を親しい大人に伝えたいという欲求が高まっていきます。
そんな1才半ごろのお子さんの「育ち」と「おうちでできる関わり」について、以下の内容について解説します。
- 全身の運動
- 指の巧緻性
- ことば
- 概念の形成
- 衣類の着脱
1つずつみていきましょう。
1才半ごろの「全身の運動」
歩行が安定してくる1才半。
走ることができるようになり、お散歩での道草が楽しくなっているのではないでしょうか。
この時期は、全身を使った動きを意識して遊びます。
あえて四つ這いの動きを取り入れるのも全身運動になってよいですね。
「おうちで」がテーマのブログですが、運動は外遊びの内容も含めて以下の3つを紹介します。
- 布団山
- お散歩
- すべり台
布団山
家にある布団を集めて山を作ります。
不安定な布団をよじ登るだけでよい全身運動になります。
ご両親も一緒に登れば、楽しさも倍増です。
お散歩
普段は車やベビーカーで行く場所も、あえてゆっくりと歩いていくのも楽しいものです。
子どもはいつも「いいもの探し」をしているので虫や花、松ぼっくり、その辺りの石も子どもにとっては宝物になります。
普段気づかない景色を楽しんだり、子どもが何に興味を示すかを知ったりできますね。
実況中継するように、色々と言葉かけしながら歩けば子どもの語彙も増えるでしょう。
すべり台
無理は禁物ですが、座って滑れるようになります。
姿勢が安定してくれば、速いスピードにも負けずに座ったまますべります。
加速度の変化、見える景色の変化といった刺激は、子どもにとって大切な経験になりますよ。
1才半ごろの「指先の巧緻性」
大きな運動の次は「指先の運動」について解説します。
指先の巧緻性
鉛筆やハサミの使用につながっていく動作。その他、衣類の着脱、手洗い、歯磨きなどの生活に必要な活動の土台となる。
1才半になると、歩行により自由になった手を使って探索活動が盛んになります。
その時期の「指先の巧緻性」を育む関わりについて紹介しますね。
色々なものを触る
- ザラザラしたもの
- ツルツルしたもの
- ベタベタしたもの
色々なものに触れることによって手の感覚が高まります。
衛生面のことを考えると、色々なものに触ることに抵抗があることもあるかもしれませんが、時には自由に触らせて、「質感の違い」を経験させてみましょう。
シール貼り
シール貼りは子どもが大好きな遊びです。
「はがす」「貼る」の動作が指先の動きを育みます。
シール貼りは成長に合わせて以下の順番で進めましょう。
- 好き勝手貼る
- 大きな枠に貼る
- 小さな枠に貼る
- 色別に分けて貼る
- 数字の順番に貼る
と内容を変えることで、長く取り組める遊びです。
1才半ごろでは①~②の内容で取り組みます。
紙に好き勝手貼る
床に模造紙などを敷いて、お子さんに好き勝手貼ってもらいましょう。
台紙からはがすのが難しい場合は手伝ってあげよう!
「指先をたくさん使う」ことが目的なので、貼る場所はどこでもOK
導入としては、ご両親がシール貼りをしていると、マネしたくなるので「ハイどうぞ」とシールを渡してあげてください。
大きな枠に貼る
貼る場所がある程度決まっていた方が貼りやすい場合があります。
うちの子が好きだったのが、雑誌に載っている人の顔にペタペタ貼ること。
うまく指先をコントロールしないとズレてしまうので、よい指先の練習になりますよ。
ぐるぐる書き
鉛筆の練習を早くも開始です。
ぐるぐる書き
左右に激しく往復する書き方から、グルグルと丸っぽい線が描けるように促します。
ご両親がお手本を見せてあげるとできることもあります。
ブロック型のクレヨンは持ちやすいので、この時期のお子さんに向いています。
また、
フエルトペン(水性)は、太くて持ちやすく、弱い力でもしっかり書けるので筆圧の弱いお子さんにオススメです。
スプーン
ご両親がスプーンを使っていると、興味を示しはじめる時期です。
子ども用のスプーンを用意して誘ってみましょう。
上手持ちのお子さんもいれば、下手持ちのお子さんもいる時期です。
その子のペースで進めます。
おままごとセットがある場合は、おもちゃの食べ物でスプーン遊びをしてみるのもよいですね。
パンツの着脱の場面で
パンツを1人で脱ごうとしたり、履こうとしたりする場合は、少しお手伝いしてあげつつ「自分で」の着脱を促しましょう。
指先でしっかり「握る」必要があるので、よい指先のトレーニングになります。
1才半ごろの「ことば」
1才半ころになると「~ではない~だ」という考えができ始めます。
もう少し詳しく説明するね。
今まで「ねこ!」と知っている言葉を言っていただけなのが、“イヌではない、ネコだ”と思考した上で「ねこ!」と言うようになります。
その結果、聞かれたものを指さすことができるようになります。
この時期は「理解語彙」を増やすことを意識して関わりましょう。
理解語彙
聞いてわかる言葉を「理解語彙」といいます。
私の経験では多くの子が、理解語彙が10個増えると話す言葉が1個増えます。
そして、話す言葉が50個くらいで二語文を話すようになる子が多いです。
このように、理解語彙を増やすことが二語文を話すことにつながります。
そこで、理解語彙を増やす効果的な方法を紹介します。
語りかけ
「ことばのシャワーをかけましょう」ということを聞いたことがありますか?
シャワーを浴びせるようにたくさん話しかけることが、ことばの発達の上で大切という意味です。
しかし、お子さんの発達に合わせて「語りかけ」をしないとストレスになることも。
ここでは、効果的な「語りかけ」の方法を紹介します。
子どもの考えていることを語りかける
子どもが花を見て「花…」と思っている時に、「赤い花だね」と語りかけを行うと「赤い」を覚えていきます。
大切なのは、子どもが感じていることを「言葉」にして語りかけること。
この繰り返しの中で、子どもは理解語彙を増やしていきます。
頭の中の吹き出しを語りかけるようにするといいよ。
2語文で語りかける
子どもの記憶力は意外と短く、長いフレーズは覚えきれません。
2語文を話す前のお子さんは2語文くらいの長さが一番頭に残りやすいです。
- きれいな花だね
- 赤い花だね
- おうちかえるよー
のような感じです。
1個プラスして返してあげる
- 子どもが「クルマ」と言ったら「くるま、はやいねー」
- 「ちゃっちゃ(お茶)」と言ったら「お茶、飲もうねー」
と子どもが言った言葉に1つ付け足して話しかけましょう。
付け足した言葉を覚えますし、2語文を話すことにつながっていきますよ。
幼児語を使う
- ブーブー
- ワンワン
- くっく(靴)
これらの幼児語は同じ音が2回続くので、頭に残りやすく子どもの理解につながりやすいです。
また、子ども自身も話しやすいという特徴があります。
絵本の読み聞かせvs図鑑
絵本の読み聞かせは、幼児期のことばの発達において最高の方法です。
とはいえ、1才台ではなかなか聞いてくれないことも多いのではないでしょうか。
この頃は子どもの興味のある「図鑑」を見ながら、話しかける方がよい場合も多いです。
絵本より図鑑派のお子さんは、「2才ころから、少しずつでもストーリーのある絵本に変えていく」ことを頭の片隅に置いて、大好きな図鑑を楽しみましょう。
1才半ごろの「概念の形成」
「概念の形成」というと少し難しいですね。
「モノの特徴がわかる力」というニュアンスです。
「リンゴ、みかん、はさみ」の3つのうち「はさみ」が仲間はずれでだとわかるのは、「くだもの」という概念があるからです。
概念があると「共通認識」ができるので、コミュニケ―ションが効率的になります。
20cmのリンゴを見て「すごい!」で伝わるのは、一般的にリンゴは10cmくらいという「共通認識」があるからです。
「ことばの発達」にも影響する、「概念」の形成を育む関わりを紹介します。
「数」も概念の1つだよ。
1才半ころは、色々なものを「見て・聞いて・触れる」ことが大切です。
色
赤、青、黄色の木製積み木を用意します。
「これは赤だよー」と色について声かけをします。
「積み木だよー」ではなく、色について声かけするということがポイント。
お花や車でもよいですが、積み木のように同じ形・同じ大きさの方が、色について説明されていることがわかりやすいです。
大きさ
粘土などを丸めて並べ、大きさを比べて遊びます。
- 小さなものを合体させると「大きくなる」
- 大きなものを半分にすると「小さくなる」
などを教えます。
高さ
高さの概念は積み木を使うのがオススメ。
どれだけ高く積めるか、競争します。
高く積んだ積み木を比較することで、「高さ」を実感することができます。
量
量はコップに入れたジュースで教えます。
コップを2出して、たくさんジュースを入れたものと、少しジュースを入れたものを用意します。
「多いね」「少ないね」と言葉で伝えます。
実際に持ってみることでより実感できるでしょう。
温度
冷たいペットボトルと、温かいペットボトルを用意して、触って確認します。
こちらも2つを比較することで、実感できます。
1才半ごろの「衣類の着脱」
衣類の着脱は、「手の力が育つ」「前後左右がわかる」「手順がわかる」など、色々な力が育って少しずつできるようになる動作です。
子どもの成長に合わせて「自分で」できるように関わります。
下に1才半~2才ごろにできる「衣類の着脱」を挙げました。
お子さんの成長に合わせて、時には見守り、時には手伝ってあげながら「子どもといっしょに」取り組んでみてください。
1才半~2才の「衣類の着脱」
- ご両親の手伝いのもとパンツ・靴下・靴・帽子を脱ぐ。
- ご両親の手伝いのもとパンツ、靴下・靴、帽子を身につける。
- ボタン・スナップを引っ張って外そうとする
- 長靴の脱ぎ・履きを自分でする
- 靴のマジックを自分ではがす
- 外出の時にコートや帽子を自分で持ってくる
- 脱いだものをご両親と一緒に洗濯カゴに入れる
まだまだご両親のお手伝いが多く必要な時期です。
子どもの「自分で!」を大切にしながら、「できた」という達成感が味わえるようにしましょう。
まとめ
1歳半のお子さんの学びと、家で取り組める関わりについて紹介しました。
おうちでできる取り組みの参考にしてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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