2才の子どもの力を伸ばしたい。家でどんなことができる?
この記事では、2才のお子さんの「育ち」と、家庭でできる関わり方を発達の専門家:言語聴覚士が解説します。
- 国家資格:言語聴覚士(ST)免許保有
- 総合病院で働く小児ST
- お子さんの発達を支援する仕事をしている
2才の「育ち」の概要
歩く、走る、跳ぶなど大きな運動、指先の細かな運動が発達します。
それにともない、食事、衣類の着脱など、身の回りのことを自分で挑戦しようとする姿もみられる時期ではないでしょうか。
話す内容も明瞭になり、2語文を話すなどの「ことば」の成長により、自分の意思や要求をお話してくれることも多いと思います。
一方、自我の育ちにより、強く自己主張する姿もみられます。
そんな2才のお子さんの「育ち」と「おうちでできる関わり」について、以下の内容について解説します。
- 全身の運動
- 指の巧緻性
- ことば
- 概念の形成
- 衣類の着脱
1つずつみていきましょう。
2才の「全身の運動」
いろいろな動きを楽しむ時期。
- 早いーゆっくり
- 前へー後ろへ
- 高いー低い
- 強いー弱い
これらの違いがわかり、動きを調整する力が出てきます。
大人の動きに興味をもつので、マネっこ遊びでいろいろな動きを促しましょう。
動物まねっこ
ウサギのマネっこ
両手を頭にあてて両足ジャンプ。「ぴょんぴょんぴょん!」と言いながら少し速い動きをします。
ゾウのマネっこ
手で鼻の動きをつけて、ゆっくりゆっくり歩きます。
上で紹介した「ウサギのマネっこ」と交互に行って、「速いーゆっくり」の違いを体験しましょう。
カニのマネっこ
両手をチョキにして横歩き。チョキの指も意識します。
ウシのマネっこ
人差し指を立てて頭に添えて、ドスドスドスと力強く歩きます。
我が家では闘牛のマネをしていたら、いつの間にか「鬼ごっこ」になっていたよ。
お相撲ごっこ
ご両親と一緒にお相撲ごっこ。
押し合いや組み合うことで、力加減の調整やバランス感覚が育まれます。
楽しく大笑いしながら、スキンシップをとることで子どもの「楽しい」を引き出します。
もちろん親が負けてあげることも忘れずに!
お馬さんごっこ
親が四つん這いになり、子どもが背中に乗るお馬さんごっこ。
お馬のスピードは子どものバランス感覚に合わせて調整します。
- 左右の高さを変える
- 腰だけ低くして角度をつける
- スピードの緩急をつける
などすることでバランス感覚が養われます。
十分に安全に配慮しながら行いましょう。
ご両親が腰を痛めないようにね。
2才の「指先の巧緻性」
大きな運動の次は「指先の巧緻性」について解説します。
指先の巧緻性
指先の器用さのこと。鉛筆やハサミの使用につながっていく動作。その他、衣類の着脱、手洗い、歯磨きなどの生活に必要な活動の土台となる。
2才では、鉛筆やハサミの使用を視野にいれた関わりがポイントです。
2才台の「指先の巧緻性」を促す関わりについて紹介しますね。
鉛筆
はじめに何か描くと、それが刺激になって似たものを次々と描いていくでしょう。
この時期は描きたいものをドンドン描かせて筆圧や指先のコントロールを高めます。
ご両親の描いたものをマネしたい子は、横線・縦線などを描かせると、さらに描画力が高まっていきます。
ハサミ
ハサミは「チョキチョキ」と連続で切るのは難しいので、「チョッキン」と1回で切る練習をします。
ハサミの先まで切ろうとすると、刃が倒れやすいので1~2cmくらいの細い紙を用意しましょう。
- 親指が上
- 身体の真ん中に
- ゆっくりと
を意識するとよいですね。
ケガには注意してね。
シール貼り
シール貼りは子どもが大好きな遊びです。
長く使えるので100均でたくさん買っておくといいですね。
「はがす」「貼る」の動作が指先の動きを育みます。
- 好き勝手貼る
- 大きな枠に貼る
- 小さな枠に貼る
- 色別に分けて貼る
- 数字の順番に貼る
の順番で進めますが、2才は③、④の練習がよいでしょう。
ご両親が木の絵を描いて、花を咲かせるように貼ってもらうのがオススメです。
積み木
積み木を高く積んだ後に横に並べるなどの、異なる動作を交互に楽しむお子さんも多いのではないでしょうか。
高く積むのは指先の繊細な動きが必要です。
倒れないかハラハラしながら、ご両親と一緒に競争すると楽しいですよ。
粘土
形が変化する素材を引っ張ったり、ねじったり、指先に力を入れて形を変化させるのが楽しい時期です。
最近では、粘土がある家庭も少ない印象ですが、2才のお子さんの指先の巧緻性を高める練習としては優秀です。
2才の「ことば」
語彙が一気にふえて2語文を話しはじめる時期です。
話す言葉が50個になったくらいに2語文を話すようになるお子さんが多いので、1つの目安にしてみてください。
この時期は、「3語文を話すこと」、「助詞を使える」ように関わるのがポイントです。
助詞
「~が」「~を」「~へ」といった格助詞と呼ばれる助詞が特に大切です。
助詞を意識した語りかけ
3語文を話すようになったら、「助詞」を含む話しかけを意識しましょう。
- 「おうち かえる」→おうちへかえる
- 「ごはん たべる」→ごはんをたべる
- 「パパ かえってきた」→パパがかえってきた
日本語は助詞がなくてもだいたい意味が伝わります。
特に、子どもに話しかける時は「わかりやすいように」と無意識に助詞を省略した話しかけになることが多いです。
この時期は意識して「助詞」を含む話しかけをしてみましょう。
- 「~を」
- 「~が」
- 「~へ」
- 「~に」
- 「~で」など
絵本の読み聞かせ
2語文、3語文が話せるようになると、簡単なコミュニケーションが取れるようになります。
しかし、この時期でも「理解語彙」を増やすことが大切です。
理解語彙
聞いて理解できる言葉のこと。理解語彙の多さが小学校に入ってからの「読解力」にもつながると言われています。
理解語彙を増やすのにもってこいなのが「絵本の読み聞かせ」です。
ご両親に読んでもらえるよころび+理解語彙が増える
という最高の方法。
個人的に「絵本の読み聞かせ」は幼児期のことばの発達において、もっとも効果的かつ有効な手段だと思っています。
上で説明した「助詞」も、絵本にはふんだんに含まれています。
また、日常生活ではあまり聞かない言葉も絵本には含まれているので、理解語彙を増やすために、子どもが飽きるまで読み聞かせをしましょう。
さらに、同じ絵本を繰り返し読むことも、ストーリーが分かっているゆえのワクワク感があります。
子どもが望む場合は、同じ絵本を何度も読み聞かせてOKです。
ワンポイント
ペラペラめくってしまったり、途中でどこかに行ってしまったりする場合は、絵本のレベルがお子さんに合っていないのかも。
あいさつ
あいさつはコミュニケーションの基本。
2才でしっかりあいさつの習慣を身につけたいですね。
楽しくあいさつするために
あいさつを身につけるためには、ご両親がしっかりあいさつをすることが大切。
家では意外とあいさつをしないご家庭が多いです。
ご両親よりも、お子さんの方がしっかりあいさつできることもあるよ。
毎日の習慣になるようにニコニコ笑顔であいさつする「おうち」にしましょう。
- 朝のあいさつ「おはようございます」
- 昼のあいさつ「こんにちは」
- 夜のあいさつ「こんばんは」
- 出かける時は「いってきます」
- 行った場所から帰るときは「さようなら」
- 家に帰ったら「ただいま」
- 食事の前は「いただきます」
- 食事の後は「ごちそうさまでした」
- 寝る時は「おやすみなさい」
誰でも知っているあいさつですが、「知っていること」と「できること」には大きな違いがありますよ。
外でのあいさつは焦らずに
恥ずかしがって、ご両親の後ろに隠れてあいさつできないお子さんがいます。
無理に言わせることはせずに、家でのあいさつをしっかり習慣化する関りで大丈夫です。
頭をチョコンと下げられれば〇ですよ。
2才の「概念の形成」
「概念の形成」というと少し難しいですね。
「モノの特徴がわかる力」というニュアンスです。
「リンゴ、みかん、はさみ」の3つのうち「はさみ」が仲間はずれでだとわかるのは、「くだもの」という概念があるからです。
概念があると「共通認識」ができるので、コミュニケ―ションが効率的になります。
20cmのリンゴを見て「すごい!」で伝わるのは、一般的にリンゴは10cmくらいという「共通認識」があるからです。
「ことばの発達」にも影響する、「概念」の形成を育む関わりを紹介します。
「数」も概念の1つだよ。
2才の「概念の形成」
象徴機能が形成され、見立て遊びが盛んになります。
象徴機能
目の前にないものを、他のものに置き換えて表現する働き。
積み木を車に見立てて「ブッブー」と遊ぶのは象徴機能の形成によってできることです。
その他、△と□の違いがわかるようになります。
大きい・小さい
大好きなお菓子で用意し、「大きいお菓子」と「小さいお菓子」を準備します。
「小さいお菓子をお母さんにくださーい」
と言って小さいお菓子を渡してもらいます。
ポイント
自分は大きいお菓子を食べたいので、「小さいお菓子」を渡すようにすると正しく選べます。
「多い・少ない」も同じように教えるよ。
赤・青・黄色
赤・青・黄色の3色の名前が分かり、正しい色を指させるようになります。
関りとしては、色がテーマの絵本で色を聞きます。
目にする機会が多いため、「赤・青・黄色」から理解するお子さんが多いです。
丸・三角・四角
形は積み木を用いて教えると、理解しやすいようです。
積み木遊びの中で、「三角だねー」と言葉かけしましょう。
高い・低い
高さも積み木が理解しやすいようです。
積み木を高く積む、「積み木タワー」を競争して作り、「高いのはどっちかな?」と確認しながら理解を促していきましょう。
数
数は、「1・2・3」まででOKです。
3つのお菓子やオモチャを用意し、ご両親が指差ししながら「1・2・3」と数えます。
お子さんにも同じように復唱を促します。
2才の「衣類の着脱」
衣類の着脱は、「手の力が育つ」「前後左右がわかる」「手順がわかる」など、色々な力が育って少しずつできるようになる動作です。
子どもの成長に合わせて「自分で」できるように関わります。
以下に2才台にできる「衣類の着脱」を挙げました。
お子さんの成長に合わせて、時には見守り、時には手伝ってあげながら「子どもといっしょに」取り組んでみてください。
「衣類の着脱」
- 見える大きなボタンを自分で外す
- 前の開いた上着を自分で脱ぐ
- 前の開いていない上着(Tシャツなど)を自分で着る
- 座った姿勢でパンツ・ズボンに足を入れる
- 立ち上がってズボンを引き上げる
- 衣類の前後・裏表がわかってくる(まだ十分ではない)
- 脱いだものを洗濯カゴに自分で入れる
2才は自己主張の強くなる時期です。
「自分で!」という日もあれば、「やってー」という日もあるのではないでしょうか。
「自分でやる!」という日は子どもの挑戦を見守りつつ、さりげなくお手伝いしてあげてください。
「頑張ったこと」を褒めてモチベーションをあげよう。
まとめ
2歳のお子さんの学びと、家で取り組める関わりについて紹介しました。
おうちでできる取り組みの参考にしてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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