3才の子どもの力を伸ばしたい。家でどんなことができる?
この記事では、3才のお子さんの「育ち」と、家庭でできる関わり方を発達の専門家:言語聴覚士が解説します。
- 国家資格:言語聴覚士(ST)免許保有
- 総合病院で働く小児ST
- お子さんの発達を支援する仕事をしている
3才の「育ち」の概要
基本的な運動機能が伸び、食事・排泄・衣類の着脱などの自立がすすむ時期。
話し言葉の基礎もでき、ご両親への質問も多いのではないでしょうか。
知的好奇心の高まりにより、質問が多くなるね。
幼稚園・保育園への入園を機に、お友達との関わりの中で成長していく姿もみられます。
そんな3才のお子さんの「育ち」と「おうちでできる関わり」について、以下の内容について解説します。
- 全身の運動
- 指の巧緻性
- ことば
- 概念の形成
- 衣類の着脱
1つずつみていきましょう。
3才の「全身の運動」
走る!跳ぶ!よじ登る!の時期。
土踏まずができてくることにより、長時間歩けるようになります。
アーチ状の土踏まずがクッションの役割をするので、しなやかな動きができ、さまざまな動きを楽しめるようにしましょう。
自然の中で
当ブログのコンセプト「おうちで」とは異なりますが、全身運動は自然や公園の中の方が向いています。
切株からジャンプ
切株や、小さな段差をヒーローになりきって「ジャンプ!」
片手の握りこぶしを上げながらジャンプすればカッコいいですよ。
よじ登る
手をつかないと登れないような急斜面によじ登れば、両手両足を使った全身運動になります。
木に手足をからめてぶら下がるのもいいですね。
ご両親がお手本を見せてあげよう!
三輪車
三輪車にまたがり、足で地面を蹴って進みます。
3歳になったばかりでは、ハンドル操作とペダルをこぐ動作を同時に行うのは難しいかもしれません。
そんな時は取り外せる押し棒付きがおススメです。
親が押す力を加減して、子どもの「こぐ力」を引き出してあげてください。
ハンドル操作の手の運動と足の協調性が育ちますよ。
ボール転がし
子どもと向か合って、足を広げて座ります。
ボールの転がし合いっ。慣れてきたら転がすスピードupです。
目と手の協応性が育まれますよ。
3人でやっても面白いね。
3才の「指先の巧緻性」
大きな運動の次は「指先の巧緻性」について解説します。
指先の巧緻性
指先の器用さのこと。鉛筆やハサミの使用につながっていく動作。その他、衣類の着脱、手洗い、歯磨きなどの生活に必要な活動の土台となる。
3才では、「~しながら~する」という活動への挑戦が始まります。
例えば、「紙を持ちながらハサミで切る」という動作がそうです。
他にも、「ゆっくり線を引く」という動作も「ゆっくり鉛筆を動かす+線を引く」という「~しながら~する」という活動でできる動作ですね。
3才のお子さんの「指先」の巧緻性を高める、おうちでできる関りを紹介します。
姿勢も意識して
3才になると椅子に座って行う活動が多くなりますが、意外と大切なのが「姿勢」。集中力にも影響します。
描画
丸のファンファーレがみられたり、丸の中に点を描いて「顔らしきもの」を表現しだしたりします。
4才近くになると目、耳、鼻、口、髪の毛などの表現も豊かになるでしょう。
それでも、手足は頭から生えるように描く「頭足人」と呼ばれる絵になる場合が多いです。
丸のファンファーレ
この時期に紙いっぱいにたくさんの〇を描くことがあり、「丸のファンファーレ」と呼びます。
上手に描くことよりも、描くことを楽しむことを優先して関わりましょう。
ハサミ
ハサミを連続で動かす「チョキチョキ切り」を促します。
- 紙をしっかり持つ(親指が上)
- ハサミを倒さないで切る
- 親指の力を均等に入れる
ということを意識し、言葉かけして教えてあげましょう。
シール貼り
シール貼りは4才でも大好きな遊びです。
「はがす」「貼る」の動作が指先の動きを育みます。
- 好き勝手貼る
- 大きな枠に貼る
- 小さな枠に貼る
- 色別に分けて貼る
- 数字の順番に貼る
の順番で進めますが、2才は④の練習がよいでしょう。
カラフルなシールで、サクランボ、ブドウ、マスカットなどを表現したり、お花を表現したりしましょう。
貼った後に、同じ色のシール同士を「鉛筆で線引きする」のもオススメです。
運筆練習にもなるので、私もセラピーでよく行うよ。
3才の「ことば」
今までは、1語文→2語文→3語文とわかりやすいお子さんの変化がありました。
3才台は、話す長さよりも「話す内容」が複雑になっていくので、一見変化がわかりにくい時期です。
3才台は
自分の考えていること、感じたことを言葉にして、話すことができるようになります。
また、質問に対して正しく答えることもできるようになります。
そのための、おうちでできる関わりについて紹介しますね。
「~だから~だね」の語りかけ
「寒い時はどうしたらいい?」の質問に、「服を着ている」と少し的の外れた返答をしていたのが、「寒い時は服を着る」という正しい返答ができるように関わります。
そのためには「~だから~だね」という語りかけを多くするのが効果的です。
「寒いから服を着ようね」と普段から理由をつけて話しかけると、理由をつけて返答ができるようになります。
- お腹が空いたから、ご飯食べよう
- でかけるから、靴を履こうね
- お風呂入るから、こっちおいで
こういった、「理由」を含む「語りかけ」を意識します。
もちろん四六時中する必要はなく、たまに意識してみてね。
絵本の読み聞かせ
絵本の読み聞かせは、3才台でも「ことばの成長」のためには非常に有効です。
2才前から~就学までずっと効果のある、最高の教材です。
個人的に「絵本の読み聞かせ」は幼児期のことばの発達において、もっとも効果的かつ有効な手段だと思っています。
ポイント
子どもがよく聞いてくれる絵本が、子どものレベルにあった絵本です。
ストーリーを楽しめるようになる年齢ですが、視覚的なおもしろさを好みます。
- 子どもの好みの絵本
- 絵にストーリーのある絵本
- ページが多すぎない絵本
- 定番の絵本
- ワクワクしかけ絵本
などを参考に選ぶといいですね。
読める「ひらがな」がいくつかある場合は、質問しながら読み進めてみるのもよいでしょう。
図鑑
子どもの好みが強く表れてくる時期でもあります。
- 乗り物
- 動物
- 恐竜
子どもの好みの図鑑で、「博士」のように詳しくなるお子さんもいます。
お外で見つけた虫を、「家に帰って調べてみようか」とご両親が一緒に調べることは子どもにとって貴重な経験になります。
「わからない→わかった!」の経験があると、記憶にも残りやすいです。
調べる習慣がつくね。
3才の「概念の形成」
「概念の形成」というと少し難しいですね。
「モノの特徴がわかる力」というニュアンスです。
「リンゴ、みかん、はさみ」の3つのうち「はさみ」が仲間はずれでだとわかるのは、「くだもの」という概念があるからです。
概念があると「共通認識」ができるので、コミュニケ―ションが効率的になります。
30cmのリンゴを見て「すごい!」で伝わるのは、一般的にリンゴは10cmくらいという「共通認識」があるからです。
「ことばの発達」にも影響する、「概念」の形成を育む関わりを紹介します。
ここでは「数」も概念に含めて説明するよ。
3才の「概念の形成」
2才でできはじめた「象徴機能」がさらに高まり、目の前にないモノを言葉でイメージできるようになります。
象徴機能(1文字目を強調)
目の前にないものを、他のものに置き換えて表現する働き。
「イメージ」が持てるようになるので、絵本の内容にいっそう興味を持ちます。
他にも、大小・多少の違いについて言葉で言えるようになります。
大小・多少・長短・重軽
「大きい・小さい」「長い・短い」という対立関係の概念を身につけるために意識的に言葉かけをします。
- 「大きなお菓子とって」
- 「長い鉛筆で書こう」
などと意識的に大小・長短の言葉かけを行います。
代表的な対立概念を下に紹介しますね。
- 大きい・小さい
- 多い・少ない
- 長い・短い
- 重い・軽い
- 強い・弱い
「多い・少ない」を発展させて
同じ水の量でも、「太いコップでは水面が低く」「細いコップでは水面が高く」なります。
この場合、3才児は細いコップの量が多いと考えます。
「比べてみよっか」といって、同じ形状のコップに入れ替えて、同じ量であることを確認してみましょう。
理科の実験のようにね。
見通す力を身につける
あらかじめ、結果について見通す力も身につき始めます。
「コップの水をこぼしそうだから、お母さんに持ってもらおう」などと考えることもできるでしょう。
見通す力を身につけるために、時には「失敗した経験」も必要です。
難しいことへ挑戦するときに、見守る姿勢も大切ですよ。
成長のためには失敗も大切!
3までの数をしっかり覚える
「3つちょうだい」というと、「ひとつ、ふたつ、みっつ」と言いながら3個渡せることが目標です。
数えながら正しい数を渡せるのは、3才では「3つ」ぐらいまでです。
ラムネなどのお菓子を一緒に食べながら「2つちょうだい」と言って渡してもらいましょう。
お店屋さんごっこで、1~3個の買い物をしてみるのもいいですね。
3才の「衣類の着脱」
衣類の着脱は、「手の力が育つ」「前後左右がわかる」「手順がわかる」など、色々な力が育って少しずつできるようになる動作です。
3才になると服の前後や表裏もわかるようになり、着やすい服の着脱も自分でできるようになっていきます、
以下に3才台にできる「衣類の着脱」を挙げました。
お子さんの成長に合わせて、時には見守り、時には手伝ってあげながら「子どもといっしょに」取り組んでみてください。
3才の「衣類の着脱」
- 靴の左右に注意できる(まだ十分ではない)
- 脱いだ服を表に返す
- 後ろへ手を回し、パンツを腰まで引き上げる
- 脱いだものを自分できちんとたたむ
- 大きなボタンを自分ではめる
- 帽子の前後がわかる
ここで挙げたものは3才の1年間でできることが目標です。
伸縮性のある服やゆったりしたパジャマなど、お子さんが脱ぎ着しやすい服で練習してみるといいですね。
すぐにできなくても1年かけて少しずつできるように関わってください。
まとめ
3歳のお子さんの学びと、家で取り組める関わりについて紹介しました。
おうちでできる取り組みの参考にしてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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