「音韻意識」を知っていますか?
「カルタ遊び」をしたり、「しりとり」をしたり、子どもにとって言葉遊びは楽しいものです。
でも、その遊びの中に、実は言葉を操るための大切な力が隠されています!
それが「音韻意識」です。
音韻意識とは、言葉を音の単位で捉える力のこと。
音を自由自在に操って、言葉を分解したり、組み替えたり、新しい言葉を作ったり…想像するだけでワクワクしますね!
実は、この音韻意識は「ひらがなの読み書き習得」に大きく影響するんです。
- スラスラ読める子、そうでない子
- 間違えずに書ける子、そうでない子
その差は、実は音韻意識の差にあるかもしれません。
このページでは、そんな音韻意識について言語聴覚士が解説します。
「ひらがなの読み書き」につながる「音韻意識」を育んで、子どもの才能を育てましょう!
- 総合病院で働く言語聴覚士(ST)
- 子どもの発達を支援する小児ST
音韻意識とは何か?
音韻意識とは、「ことばの音の側面に注目し、操作する能力」のことです。
具体的には、以下の4つのスキルを指します。
- 言葉を音に分解するスキル
- 音を区別するスキル
- 音の順番を把握するスキル
- 音の順番を入れ替えるスキル
4つのスキルについて、以下に説明します。
音韻意識①言葉を音に分解するスキル
「言葉を音に分解するスキル」は、日本語の音の基準※に沿って1つ1つに分ける力です。
例えば、「桜」という言葉なら「さ・く・ら」の3つの音に、「かたつむり」なら「か・た・つ・む・り」の5つの音に分解できます。
※「日本語の音の基準」について知る
「音」というと、楽器を鳴らしたり、モノをぶつけたりした時に聞こえるものですよね。
普段の生活では馴染みがないかもしれませんが、人の声も言語学では「音」と表現します。
では、私たちが話している日本語には何種類の「音」があるでしょうか。
よく「50音」という言い方をしますが、日本語の音は103種類あります。
日本語の103種類の音は以下の通りです。
あ | か | さ | た | な | は | ま | ら | が | ざ | だ | ば | ぱ | わ | ん |
い | き | し | ち | に | ひ | み | り | ぎ | じ | び | ぴ | っ | ||
う | く | す | つ | ぬ | ふ | む | る | ぐ | ず | ぶ | ぷ | ー | ||
え | け | せ | て | ね | へ | め | れ | げ | ぜ | で | べ | ぺ | ||
お | こ | そ | と | の | ほ | も | ろ | ご | ぞ | ど | ぼ | ぽ | ||
や | きゃ | しゃ | ちゃ | にゃ | ひゃ | みゃ | りゃ | ぎゃ | じゃ | びゃ | ぴゃ | |||
ゆ | きゅ | しゅ | ちゅ | にゅ | ひゅ | みゅ | りゅ | ぎゅ | じゅ | びゅ | ぴゅ | |||
よ | きょ | しょ | ちょ | にょ | ひょ | みょ | りょ | ぎょ | じょ | びょ | ぴょ |
音韻意識②音を区別するスキル
「音を区別するスキル」とは、音の違いを聞き分ける能力のことです。
例えば、「こ」と「ご」は似た特徴を持つ音ですが、異なる音です。日本語の音の基準では、この2つは別々の音として扱われています。
一方、英語の「Light」と「Right」の『LとR』は、日本語では「同じ音」として扱われます。
日本人にとって『LとR』が同じように聞こえるのは、2つの音を区別する必要のない環境で育ったからです。
音韻意識③音の順番を把握するスキル
「音の順番を把握するスキル」とは、言葉を構成する音の並び順を意識的に認識する能力のことです。
例えば、「車」という言葉は「く」の音から始まり、次に「る」の音が続き、最後の音が「ま」であることがわかることです。
音韻意識④音の順番を入れ替えるスキル
「音の順番を入れ替えるスキル」とは、言葉を構成する音の並び順を入れ替えて、新しい言葉を作る能力のことです。
例えば、「りんご」の「り」と「ご」を入れ替えて、「ごんり」という新しい言葉を作るスキルです。
「ごりん」なんて言葉はないけどね。
また、言葉を逆に言ったり、音の一部を省略したりすることもこのスキルに含まれます。
- 言葉を逆に言う:すいか→かいす
- 音の一部を省略する:くるま→くま
音韻意識の4つのスキルをまとめておきますね!
音韻意識が読み書きで重要な理由
音韻意識は、「ひらがなの読み書き習得」に大きく関係しています。
なぜなら、日本語は「1つの音が1つのひらがなに対応する」という特徴があるからです。
自分が言ったり、聞いたりする言葉を1音ずつ捉えることができなければ、文字を書いたり正確に読んだりすることは難しくなります。
例えば、「桜」という言葉を聞いて「さくら」と書く場合を考えてみましょう。
- 「桜」を「sa・ku・ra」と3つの音に分ける
- 1番始めの音「sa」に注目する
- 「sa」に対応するひらがな「さ」を思い出す
- 「さ」を書く
という4つの過程に分けられます。
この過程の1~2で必要なのが音韻意識のスキルです。
音韻意識が十分に育ってない場合
「さくら」と書くことを例に、音韻意識が十分に育ってない場合、どのような間違いをするか例を挙げます。
「言葉を音に分解するスキル」が育っていない場合
「s・aku・ra」と分けたり、「saku・ra」に分けたりします。
当然、「s」や「saku」に該当するひらがなはないため、書くことができません。
「音を区別するスキル」が育っていない場合
「sa」と「ta」を十分に区別していない場合、「たくら」と書いてしまいます。
「音の順番を把握するスキル」が育っていない場合
始めに何を書いていいかわからなかったり、「さ」の次に何を書いたらいいかわからなくなったりします。
音韻意識は3~7歳で発達する
音韻意識は4歳半ごろから身につき始めると言われています。
ただ、ひらがなを読むために音韻意識の一部のスキルは必要です。
そのように考えるとひらがなを読み始める3歳頃から、音韻意識の基礎的な力は育ってきていると考えられます。
また、音韻意識④の「音の順番を入れ替えるスキル」に関しては、年長の1年間で急速に育ち、小学校1年生で、さらにいっそう発達します。
音韻意識を育てる遊び
音韻意識を育てるため、おうちでできる遊びを紹介します。
子どもが楽しんでできるものを集めたよ。
「あ」から始まることば探し
「あ」から始まる言葉を言い合う遊びです。
「青」「アイス」「アイロン」など。
親子で交互に言い合って競争したり、長い言葉の方が高ポイントにしたりするとさらに盛り上がります。
もちろん「あ」以外の音に変えてもいいですよ。
しりとり
「しりとり」は言葉の最後の音に注目する遊びです。
楽しみながら言葉の音に構造に気づき、音韻意識が自然と育まれるのが「しりとり」のよいところです。
たぬき言葉
「たぬき言葉」は、「た」の音を抜くと出現する言葉を子どもが答える遊びです。
- ねたこ→ねこ
- さたかな→さかな
- くたるたま→くるま
2文字の言葉から始めて、少しずつ文字数を増やします。
「た」を必要以上に多く入れると子どもウケがいいですよ。
さたたかたたな→「さかな」みたいにね。
逆から言うと?
言葉を逆さまに言うとどんな言葉になるか考える遊びです。
- 「はな」を逆から言うとなーんだ?
- 「バケツ」を逆から言うとなーんだ?
「みずね」を逆から言うと?→「ねずみ」のように、逆から言うことで言葉になるやり方もいいですね。
しゃべくりお化け
「しゃべくりお化け」は、音の順番を入れ替えて言葉を作る遊びです。
- 「ごいち」→いちご
- 「りまわひ」→ひまわり
「逆から言うとなーんだ?」よりも難易度の高い遊びです。
カルタ
カルタは「はじめの文字」に注目する必要がある、音韻意識を楽しく育てられる遊びです。
勝敗がつくので、子どもが夢中になって楽しめます。
文字数すごろく
文字数すごろくは、絵カードを用意し、選んだカードの文字数だけ進むルールのすごろくです。
「すごろく」と「絵カード」を用意する必要がありますが、家族全員でできるというメリットがあります。
回文
回文は上から読んでも、下から読んでも同じ言葉になる言葉。
下から読んでも同じになるか確認する過程が、音韻意識を育みます。
回文の例
3文字
夫婦、トマト、ダメだ、泣くな、痛い、奇跡、歌う、八百屋、南、子猫、いない、印、アジア、スイス
4文字
キツツキ
5文字
キノコの木、このきのこ、うどんどう?、柿の木か?、作る靴、歌うたう、描いたイカ、黄色い木、靴につく、イカと貝、崖でケガ、無駄なダム、ヨダレだよ、ナスですな、ゴマ卵、新聞紙
じゃんけんグリコ
「じゃんけんグリコ」は、階段などでじゃんけんをして、勝った人が決まった数だけ進み、ゴール地点に最初に着いた人が勝ちの遊びです。
- グー:グリコ(3歩)
- チョキ:チヨコレイト(6歩)
- パー:パイナツプル(6歩)
ローカルルールもあるため、その地域に合わせた遊び方で楽しみましょう。
まとめ
音韻意識は、ひらがなの読み書き習得の基礎となる重要な能力です。
ことばの音の側面に注目することで、音と文字の関係を理解し、読み書きの土台が築くことができます。
このページで紹介した「音韻意識を育てる遊び」は、おうちで楽しく簡単におこなうことができます。
親子で一緒に遊びながら、音韻意識を育てましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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