言語聴覚士の「くろねこ」です。
総合病院でお子さんの発達支援の仕事をしています。
この記事では
幼児期のお子さんをもつご両親に向けて
「ひらがな」が読めるようになる練習方法をどこよりも詳しく、丁寧に、可能な限りわかりやすく解説します。
- 文字に興味を持ちだしたけど…
- そろそろひらがな練習を始めた方がいいかな?
- 「ひらがなの読み書き」ってどうやって教えるの?
こんな風に「ひらがな」の教え方に悩む方は多いです。
というのも、「ひらがな」は小学校入学までに「必ず身につけなければいけないこと」ではありません。
それゆえ、教え方の教科書のようなものはなく、幼稚園・保育園での指導内容も園によってマチマチです。
その一方で子どもたちは、「ひらがなの大部分を読むことができる状態」で小学校に入学しているという現状があります。
というわけで、この記事で「ひらがな練習の方法」を解説してきます!
ひらがなの「読み書き」練習で大切なこと
この記事は、言語聴覚士「くろねこ」がひらがなの読み書き練習について解説します。
言語聴覚士(ST)は言語・音声の処理過程を分析し、支援するリハビリ専門職です。
私は、小さなお子さんの支援を専門に行う「小児ST」です。
STは読み書きに関する専門家でもあるよ!
普段は複雑な「脳内の言語処理モデル」をイメージしながら仕事をしています。
が、このような難しいモデルの説明はせず、「わかりやすさ」を第一に考えて解説します!
ひらがな練習でとにかく大切なこと
はじめに、ひらがな練習で大切なことをお伝えします。
「ひらがな練習」でとにかく大切なことは
楽しく学ぶ
ということです。
この記事で説明している内容は「幼児期のはじめ」から「ひらがなの文が読める」ようになるまで。
年齢で言えば1歳から6歳ころを想定しています。
約5年にわたる期間ですので、楽しく学ぶことが大切です。
大人から「教えられる」よりも、子ども自身が興味を持って「自ら学ぶ」方が、圧倒的に効果的なので大切にしたいですね。
楽しければ、子どもが自ら学ぼうとする!
もしも
「これが“あ”だよ」と教えていた!
「これ何て読む?」と聞いていた!
という方は、ぜひこの後も読み進めていってください。
次に楽しく学ぶためのポイントを解説します。
ひらがな練習を楽しく行う3つのポイント
幼児期の子どもたちが「ひらがなの読み書き」を学ぶ時に、楽しく効果的に行うためのポイントを3つ紹介します。
遊びを通じて学ぶ
幼児期の子どもは、遊びを通じて学ぶことが大好きです。
学習教材も遊びに見立てることで、子どもはより楽しく学習することができます。
ひらがなの読み練習ではゲーム感覚でできるカルタがおすすめ!
対話を通じて学ぶ
幼児期の子どもは対話を通じて学ぶことが大好きです。
特に大好きなご両親との対話は、子どもに合わせた働きかけができるので効果も大きいです。
小さな成功体験を繰り返す
子どもは「上手にできた!」が大好き。一方、失敗は大嫌い。
成功体験が多いと子どもはモチベーションも上がり、より効果的に学べます。
成功体験のためには、子どもに合った難易度で練習することが大切です。
次に、適切な難易度の大切さを解説しますよ。
ひらがな練習は適切な難易度で行うことが正解
「ひらがな練習」をするときに気をつけなければいけないのは、「ちょうどいい難易度」であること。
簡単すぎも、難しすぎも十分な効果が得られません。
そのためにこの記事では、「ひらがなが読めるようになるまで」を
6ステップ
に分けています。
各ステップについて詳しく解説していますので、お子さんの習得状況を確認しながら読んでくださいね。
ひらがなが読めるまでの6ステップ
「ひらがな」が読めるまでを6ステップに分けて考えます。
最終的なゴールは、ひらがなの「文」が読める状態。
また、各ステップで、どのような働きかけがよいかも解説します。
ちなみに、「絵本・図鑑・50音表」はひらがなが読めるようになる上で、非常に効果的なので何度も出てきます。
- 絵本
- 図鑑
- 50音表
ステップ1:文字の機能に気づく
「ひらがなの読み」は、まずここからです。
生活の中で文字に親しみ、その記号としての機能に気づく
もう少しわかりやすく言うと
「おっ、この記号のようなものには何かしらの意味があるぞ…」と、子どもが何となくわかるというイメージです。
具体的にどうすればいいの?というと、これらがおすすめです。
- 絵本の読み聞かせ
- 図鑑
絵本の読み聞かせ
絵本の読み聞かせは、文字の機能に気づくきっかけにもなるのでどんどん読んであげましょう。
例えば、読み聞かせのときに文に指を添えて読んであげることが、文字の機能の気づきになることもあるでしょう。
紙芝居もよいです。
紙芝居は裏側が文字だらけなので、ご両親がそこに書かれている内容をお話しすることで、文字の機能の気づきになります。
紙芝居は大きな図書館で借りられるよ。
図鑑
図鑑はイラストのとなりに必ずその「名前」が書かれています。
「これの名前は何かな~?(文字を指さして)カタツムリだね!」
この一連の流れが文字の機能の気づきになります。
また、図鑑に書かれている説明文を読んであげることも効果的。
子どもが興味のある内容なら書かれている内容を知りたがるでしょう。
ステップ2:文字を読む真似をする
文字の機能に気づくようになると、文字を読む真似をするようになります。
これは、普段の生活で文字に触れる機会や絵本を読んでもらう経験を積み重ねてできるようになることです。
ご両親が上手に「絵本の読み聞かせ」をされた証拠ですね。
このステップ2への働きかけ方としては、ステップ1に引き続き
- 絵本の読み聞かせ
- 図鑑
がおすすめ。
絵本・図鑑を見ながら、「質問する→答える」というやり取りで育まれていきます。
特に、子どもが質問し、ご両親が答えるということが効果的なので、お子さんが興味のあるものを用いるのがいいですね。
ステップ3:知ってるひらがなを読む
4歳ぐらいになると、少しずつひらがなを読めるようになります。
そして、自分の名前に含まれる「ひらがな」から覚えていくお子さんが圧倒的に多いです。
目にする機会が多いからでしょう。
知っているひらがながあると、子ども自身が、その字を探して読むようになります。
文字への興味が一段と深まる時期です。
この時期におすすめなものは
- 50音表
- 絵本
- 図鑑
中でも「50音表」が特におすすめ!
この時期に使用する50音表は絵とセットになっているものを選びましょう。
お風呂に貼れる防水のものもいいですね。
湯船に浸かっている時は意外とヒマなので、50音表を眺める時間が長いです。
「すいかの“す”だね!」と声かけする感じで使います。
イラスト付きの防水50音表は100均で売っているよ。
ステップ4:清音を読む
この時期になると、知っている「ひらがな」を読めるよろこびで、どんどん覚えていきます。
清音を短期間で覚えていくお子さんも多いでしょう。
清音とは
ひらがなのうち、「が」のような点々や、小さい「ゃ、ゅ、ょ、っ」を除いたものです。
本来は「を」、「ん」は含めないのですが、一緒に覚えてしまうお子さんが多いので例外的に含めます。
具体的には以下の46つです。
あ – い – う – え – お
か – き – く – け – こ
さ – し – す – せ – そ
た – ち – つ – て – と
な – に – ぬ – ね – の
は – ひ – ふ – へ – ほ
ま – み – む – め – も
や – ゆ – よ
ら – り – る – れ – ろ
わ – を – ん
音と文字の関係を理解する大切な時期
この時期は「ひらがな」が読めるようになる大切な時期なので丁寧に解説しますよ。
音
「音」というと「何かを叩いた時の音」、「楽器の音」など空気の振動をイメージすると思います。
広い意味では人間の声も「音」に含まれ、話し声(音声)も「音」と呼びます。
「あ」は1つの音
「さくら」は3つの音
といった具合です。
「ひらがな」の特徴
日本語の特徴として、基本的に「1つの音」と「1つの文字」が対応します。
この対応関係がひらがなの読み書きを身につける上で大変重要です。
「清音を覚える」とは、この「“1つの音と1つの文字の関係”を46個覚えること」といえます。
この時期の清音を覚える効果的な方法を紹介します。
- 絵本・図鑑
- カルタ
- 50音表
- 音声の出るエデュトイ
絵本・図鑑
絵本や図鑑はひらがなの清音を覚えるためにも有用です。
ポイントとしては
- 文字が少なめなもの
- 繰り返し見ている内容を知っているもの
の2点があります。
理由は子どもにとって難易度が低いからです。
小さな「わかった!」を繰り返すことでモチベーションが上がり、どんどん覚えていきますよ。
絵本・図鑑は万能だね!
カルタ
楽しいゲームでひらがなを覚えるのはかなり有効です。
中でもカルタはかなり効果的。
カルタのメリットを紹介します。
- 子どもが楽しい
- わかりやすいルール
- 用いられているが清音のみ
中でも「子どもが楽しい」というのがいいですね。
楽しさの中でこそ、子どもの力は伸びていきます。
またカルタしたい!のためにさりげなく負けるのがポイント!
50音表
50音表はここでも大活躍です。
絵とセットとなっているのがここでもおすすめ。
音声がでるエデュトイ
少し高価ですが、音声がでるエデュトイも効果的です。
エデュトイは、何よりも子ども自身が興味を持ちやすいことがメリットです。
これ何だっけ?(ボタンポチッ)\あ/
教えるというより、子どもが自ら学ぼうとする過程が効果大です。
今回紹介した3つの方法は、ひらがなの清音を覚える効果的な方法です。
前提として、楽しく学べる環境を作ることが大切ですよ。
ステップ5:単語を読む
自分や家族の名前がわかるようになると、身近にいる友達や先生の名前を読んだり、絵本の一部を読んだりします。
読めるようになったことがうれしいようで、看板やテレビの文字をしきりに読むこともあるでしょう。
褒めてもらいたい気持ちもあるので、たくさん褒めてあげましょう。
がしかし、まだこの時期は1文字ずつ「逐次読み」です。
内容の理解は、1文字1文字読んでいき、読んだ後で「わかる」という流れです。
単語を読むことを見につけるには下記がおすすめです
- 絵本
- 図鑑
- なぞり書き
絵本と図鑑はここでも活躍します。
また、この時期は「ひらがなのなぞり書き」の練習をする時期とも重なります。
基本的にひらがなのなぞり書きは「単語」のものが多いです。
薄く書かれた文字を読みながら書くので、単語を読む練習にもなりますね。
この時期以降は、読む練習が「書く力」の土台となり、書く練習が「読む力」の底上げになります。
ちなみに、小さい「ゃ、ゅ、ょ、っ」が含まれる文字はまだ難しいでしょう。
ひらがなを書く練習の進め方については下記の記事をご覧ください。
ステップ6:文を読む&特殊音節を読む
単語をまとまりとして読めるようになると、今までは大人に読んでもらっていた絵本の文章を自分で読むようになってきます。
また、小さい「ゃ、ゅ、ょ、っ」も親に教えてもらいながら少しずつ身につけていきます。
文を読む力を身につけるのにおすすめの方法を紹介します。
- 絵本
- カルタ
- 書く練習
絵本
絵本はこのステップでも大変有効です。
はじめは、内容を知っている絵本を用いた方が、子どもにとって読みやすいでしょう。
また、子ども自身、小さい「“ゃ、ゅ、ょ、っ”は特別な読み方のルールがあるぞ」とわかっています。
ご両親に教えてもらいながら、読み進め、身についていきます。
同じ本を繰り返し読むことは、読むスピードが上がるという効果も見込めます。
とはいえ、1文字ずつ読む逐次読みでOKな時期です。
カルタ
この時期、カルタは「読み札」もご両親と交代で読んでもらうことにトライしてみましょう。
「読み終わるまではご両親もカルタを探さない」ということを伝えないと、読むのを嫌がるお子さんもいます。
書く練習
この時期、ひらがなを書く練習でも短い文や、小さい「ゃ、ゅ、ょ、っ」が含まれるドリルを行うことになります。
書く練習が、文・「ゃ、ゅ、ょ、っ」の読み練習になります。
まとめ
ひらがなが読めるようになるまでの過程を6ステップに分けて解説しました。
忘れてはいけないのは「楽しく学ぶ」ということ。
この記事が、幼児期のお子さんをもつご両親の手助けになれば、それほど嬉しいことはありません。
お子さんが楽しみながら、「ひらがな練習」ができるようになることを、心から願っています。
「くろねことみけねこ」管理人:言語聴覚士「くろねこ」
最後までお読みいただきありがとうございました。
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